"また会いましょう"ーーーー
そんな風に叶える気もない言葉を免罪符のように吐かれても困る。
私は知っている。この世界から離れた者の末路は二通りしかない。
一つ、離れると言いながらも覚悟を決めきれず、その内寂しくなり結局帰ってくる者。
そしてもう一つ、本当に二度と帰って来ず、その後一切の消息を断ってしまう者。
前者と後者は割合的には6:4といったところで、どちらになるかは日頃の言動などを見ていれば大抵分かる。
そして彼女はどう考えても後者だ。
彼女は寡黙であったが、いつだって全力で、いつだって本気だった。
そして、一度言い出したら聞かない人だった。
その言動に何度ふりまわされてきた事か。
ーーーー否。
今更何を考えたって仕方ない。
思えば私は彼女の何をも知り得ないのだから。
私自身がこの世界で己を偽っているように、彼女だって己を偽っていたのかもしれない。
そうーーーもしかしたら"彼女"ですら無いのかもしれないのだ。
私は空を見上げた。
夜空には零れそうな程の星々が煌めき、流星が幾つも夜を切り裂いてゆく。
透き通るように蒼い月は刃のように鋭い三日月であった。
偽りで出来た世界。偽りかもしれない自分。偽りかもしれない約束。
全く腹立たしいが、だがそれでいい。
少なくとも彼女と共にあった時間の幸せは、私にとっては正真正銘、本物であったのだから。
ーーーまた、また会いましょうーーー
届かぬ声で、私は静かに囁いた。
GR01"別れ"
11/13/2024, 12:10:15 PM