落ちていく
自傷、死を扱っています。閲覧注意。
私の母は、自傷する人だった。
精神的な病のせい。
あるとき病院に入院してお見舞いに行ったとき、看護師に言われた。
「嫁姑問題で悩んでいるようです」
私のことで悩んでいたんじゃないんだ。良かった。
先ずそう思ってしまった私は、なんて酷い娘なんだろう。
お母さんに寄り添いもしないで。
嫁姑と言っても、母に姑はいない。
ウチはちょっと複雑。
母は私を産んだ後、父と離婚して私を連れて母の実家に身を寄せた。
そこには母の兄と兄の嫁、母の実の両親がいて。
叔母と祖母の仲が兎に角悪い。
幼い私でもわかるのだから、相当酷い。
高校生の頃、私と叔母さんの息子--私にとっては従兄弟--の仲が悪化する出来事があった。
私は夜眠れなくなり、でも、母に心配をかけまいと親たちの前では仲が悪くないフリをした。
もしもあのとき、母に祖母と共に家を出ようと言えていたのなら。
それが無理と言われたとしても、高校を卒業後、就職した直後にでも家を出ることができたのなら。
まだ、お母さんが精神的な病を発症する前だったから、発症せずに済んだのかもしれない。
退院後は通院しながら、母は社会復帰もしたし、診察の結果、内服も終了した。
でも、私にはいつも恐怖が付き纏っていた。
また、自傷したら。
医師には治る見込みのない病気だと言われていた。
私は毎日母が生存しているか不安に駆られながら日常生活を送った。
そして。
私に何か言いたげな顔をしたくせに、何も告げず、遺書だけを残して母はこの世を去っていった。
その日を境に、母の年齢より1歳でも長く生きることが私の目標になった。
母が死去した年齢を超えた今、母が死を思いとどまってくれていた私の年齢に、私の末娘が誕生日を迎えるのを目標にしている。
そのあと、私の中で目標ができるのかどうか、私にはわからない。
そして。
母の死から十数年経って、叔母は身体が不自由になった。
私は遠くに住む従兄弟たちの代わりに世話をしている。
けれど……私は叔母のことも従兄弟のことも許していない。
許せるはずがない。
仲の良いフリをするけど、一生恨んでしまうのだと思っている。
落ちていく。
否、私の負の感情は、ずっと前から深淵にいる。
落ちていく
11/24/2024, 10:34:35 AM