私の人生の始まりはまさしくこの世に産まれた瞬間からだ。
しかし全てが始まった瞬間は違う。
弟が産まれた時?
いいや、それは私に兄としての自覚が芽生えた瞬間だ。
友達が記憶喪失になった時?
いいや、それは私に人の心の複雑さを知らしめた出来事だ。
現代社会にも関わらず、神への生贄とかいう理不尽に私が選ばれた時?
いいや、それはほんのきっかけに過ぎない。
……その後だ。
私がこの世を去ってから。
私がいなくなってから歯車が動き出したかのように、私と関わった全ての人の運命が大きくうねり始めている。
それはまさしく物語の始まりと言っても過言ではないほどに。
私がその舞台に立つことができないのは少し残念に思うが、この物語の登場人物ほぼ全員と私は何かしらの関わりがある。
まるで主人公みたいではないか。
そう思うとちょっとだけ気分が良くなる。
……だが主人公のいないこの物語を、残された人々はどう紡いでいくのだろう?
どんな結末になるのだろう?
楽しみでもあり、不安でもある。
4/18/2025, 3:28:02 PM