妻は毎日、父親の話を息子に聞かせたらしいんだ。
「あなたにそっくりの茶色の髪。優しくて、困ってる人をすぐ助けに行ける人」
料理の下ごしらえを終え、二つある椅子の片方に腰掛け、まだあんよもできない息子に話しかけている。
まだ、小さな彼は離乳食がはじまったばかり。母親はミルクで煮たパン粥を小さな口に入れていく。
「おいちーね」
そして抱き上げた息子にせっせと、あるかないかの英雄譚を聞かせる。
「たーた」
「そう!偉いわ」
彼女は母性溢れる顔をする。
畑に家事に村の仕事に家畜の世話。彼女は毎日忙しそうだ。いったいいつ寝ているんだろう。
そして彼女は小さい小屋を見渡した。
そこに父親の僕はいない…?
そう気付いた瞬間。ぞわりと飛び起きた。
外を見張っていた仲間達が振り向く。
胸に沸き立つ熱い想いを、恥ずかしげもなく言うなら…望郷の想い。執念。
そんなところだ。
もしも未来がみれるなら
4/19/2026, 9:26:05 PM