生まれた時から酷く醜い世界を見つめていた。
この瞳に映るものは基本的に2重に見えて、耳で拾う声も2重に聞こえる。
無機物は誰かの声を録音して、自動で私に聞かせてくる厄介なモノだった。
それが私の世界。今までもこれからも、変わることなく続いていくと思ってた。
ある日、突然変化は訪れた。
学校にやってきた転校生は、私のクラスメイトになるらしい。そんな噂を聞いていたが、正直興味なんてなかった。
それなのに、彼女が余りにも綺麗だったから⋯⋯今まで見ていた私の普通が歪であると知る。
声も姿も2重にならない不思議な人。出会った瞬間、一気に興味がわいた。
それと同時に、なぜ他と彼女は違うのかを考えるきっかけにもなり、私はそれを解明するべく彼女の秘密を探る事にした。
話しかける勇気は流石になかったから遠巻きに彼女の事を観察してみる。
彼女という人となりを観て、ようやく理解したことがあった。
それは彼女も良く見れば2重に見えるし、声も2重に聞こえていたという事。ただ他と違うのは、彼女の姿も声も同じモノを重ねただけだから気付かなかっただけ。
それに気付いて、私は自分が見ている2重の世界の片方が―――相手のココロである事を知った。
彼女だけが美しい世界。
鏡に写る私も例外ではなく⋯⋯周りにいる誰も彼もが取り繕っている。
虎視眈々と、自身の利益のために誰かを蹴落とそうとする人達がいる中で――――――彼女は今日もキラキラとした優しい笑顔で、醜悪(わたし)の世界を彩っていく。
2/11/2025, 2:28:11 PM