真っ白な部屋の片隅に犬がいる。
ぷるぷる震えている。
白い毛並みが、振動とともに恐怖に震えている。
時折聞こえる、大砲の音が彼をそうさせるのだ。
ここは、銃後である。
だが、この戦争は長く続いて、両国の市民を辟易させている。
兵役に入る時に猫を連れ込んだ男の話を聞いて、このサモエド犬を持ち込めないかと企てた友人が、結局兵舎には連れ込めない(猫は吠えないが、犬は吠える)のでと、預けて出ていった彼は、部屋の隅から離れようとしない。
たとえば、彼を愛すことはできる。
餌をやったり、撫でてあげたりすることはできる。
だが、彼は戦争の恐怖に怯えている。
寂しさに肩を震わせて明るい顔を見せない彼に、私ほ心配を隠せない。
大砲の音は、私をも不安にさせる。
かかずらっている暇はない。彼は私を必要としていないのだ。
もはや、その問題はこの部屋を揺らす爆発音とともに、白く固まった埃のように部屋の隅に座っている。
12/7/2023, 10:25:12 AM