霜月 朔(創作)

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未来の記憶



俺は闇の中に、
一つの光を見た。
それは遠く、儚く、
…酷く、淡い。

只、胸に疼く痛みだけが、
鮮やかに蘇り、
その光を覚えていた。
まるで過去から未来へと続く、
細い糸のように。

名前も知らない…お前。
声も知らない…お前。
それでも心は知っている。
こんなにも切なく、
涙さえ滲むほどに、
お前を求めてしまうのは、
何故だろう。

俺は闇の中で、
何度も何度も手を伸ばす。
だが、指先は虚空を掴むだけ。
冷たい闇が、俺を嘲笑う。

それでも。俺は諦めない。
どんなに遠くても、
俺は未来にお前を探す。

俺とお前は、
隣に立ち、笑い合い、
そして…消える。

その儚い一瞬を、
俺は知っている。
まだ訪れていない筈の、
未来の記憶。


2/13/2025, 8:27:08 AM