街中にぽつんと咲いていた花を愛でていたら、通りかかった子どもがその名前を教えてくれた。
どこかで聞き覚えがあると思ったら、僕はずっと前にその花の名前を教えてもらったことを思い出した。
どうして忘れていたんだろう? 大切なことだった気がするのに。
そのときも僕に話しかけたのは幼い子どもだった。でも、今と違って目線が同じ高さだった気がする。その子は塞ぎ込んだ僕の肩に手を置いて言ったんだ。
「勿忘草だよ。覚えててね」
振り返ると、女性が僕の肩に手を置いている。あのときと同じように。
僕は思わず、だけど確信して、こう言っていた。
「思い出したよ。君のこと」
これからは、その君の泣き顔を忘れないように生きていくよ。
そして、恐る恐る近寄ってきた我が子を強く抱きしめた。
2/3/2024, 4:11:29 AM