星空のもとで、私たちはそっと寄り添った。左頬に感じるぬくもりが、私の心をほっとさせる。
じっと見つめる視線の先で、星々は少しずつ南に動いていく。夜が更けて、空気が冷んやりと身体を包みこむのを感じた頃、二人はようやく身体を引き離した。
これからの未来を想像すると、今の平穏さが奇跡のように思える。
「明日…。」
私は気持ちを引き締めながらつぶやいた。
「いよいよだね。」
答える彼の横顔は、暗がりの中にシルエットとなって浮かんでいる。この横顔がたまらなく好きだ、と思いながら私は目を逸らした。今は時間が惜しい。
「夜が明けたら出発だね。」
私は手近な荷物をまとめた。失敗は許されないのだ。
テントの中の小物を隅に押しやり、寝袋に入って眼を閉じる。まださっきのキスの余韻で、心なしか鼓動が早い。
そっと横を見ると、彼はさっさと眠る構えのようで、アイマスクを付けているのが薄暗がりの中で見えた。アイマスク?!
(なんでやねん…。)
私は心の中で突っ込みを入れた。
もう少しロマンチックな気分でいたかったが、アイマスクで防御されたら、すごすごと引き下がるしかない。
【星空】
7/6/2023, 7:42:39 AM