喜村

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 作られた光を見て、何が楽しいのだろう。
 寒空の下、クリスマスが近づいて来たからか、やたらとカップルが肩を寄せあい歩いている風景が目につく。
 俺には彼女というものがいないので、こういった行事には無縁である。
 人工的な光を見て、感動しているカップル達。何がそんなに良いのだろうか。
 そう思うなら道を変えろと思われそうだが、あいにく俺も好き好んでこの道を通っている訳ではない。

ここが帰り道……というより、俺の家なのだ。

 イルミネーションといえば、街中と思われがちだが、ここはど田舎、街頭だけでもイルミネーション化しているくらいの、ど田舎である。
 しかし、そのど田舎の中に、煌々と光輝き、たくさんの色が移ろい点滅する。でかい樹木と家の壁面に大量の電球を添えて。
いわば、ここにしか、イルミネーションというイルミネーションがなく、カップルが人の家の前にたむろっているのである。
 親はそれが毎年の楽しみらしいので、何も言えないが、毎年若干気が滅入るのであった。
「入りにくいなぁ……」
 俺はぼそっと呟いた。



【イルミネーション】

12/14/2022, 11:28:12 AM