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「同情なんていらないわ」
とシンディーは言った。
安っぽい言葉だったが、酒場のシンガーをしていた女だった。
ぐずぐずと酒に溺れ、男に溺れた。
ピンヒールの高いエナメルの靴を履いていた。
それで踏まれた男肌数知れず。
友人は言った
「シンディーの言うことは当てにならないよ。あのクソ女、いいシンガーだからって、たかを括ってる」
ある日、シンディーが僕に電話で相談をしてきたことがあった。
「あの、フレッド? 私。どうかしてるのかしら。ただ、涙が溢れて止まらないの。酒場から追放されて、歌えなくなったあの日から」
シンディーは、もともとアルコール中毒だったが、それは酷く悪くなるばかりだった。
僕はこう返した。
「一週間でも、旅行に出るといい。気晴らしに、どこか……、美味しく酒が飲める場所に。そう、フランスなんかどうだろう?」
フランスは旅立つにはいい場所だ。
ブルゴーニュの、ワインで乾杯をしよう。ハムとチーズを肴に。

2/21/2024, 9:50:55 AM