むぎちゃ

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「グスッ…」ポタッ…ポタッ…
 私の頬を雫が絶え間なく流れていく。
「…夫だっ…君の…いじゃな…」
「そう…よ。ひと…かかえこま…いで」
 周りの仲間が何か声をかけてくれている。でも、今の自分にはそんな言葉を聞く余裕、いや、権利もない。
 私はさっき、お世話になった方々の3年間を一瞬で無駄にしてしまった。頑張りも、努力も、全て水の泡にしてしまった。一番辛いのは先輩方のはずであるのに、私が泣いてそれを慰めてもらっているのも、自分の未熟さを打ち付けられているようで胸の奥がきつくなる。
「………」
 同級生の人達はみな黙り込んでいる。悔しいような、悲しいような、沢山の感情が混じり合った表情を浮かべて。
 ああ、私は何をしてきたのだろうか…私は今まで努力していたのだろうか…私はなにかの役に立ったのか…私は…私は………

「はっ!」
「また夢か…」
 目を冷ますと体中に冷や汗をかいて、ブランケットを両手で握りしめた状態でベッドに寝転がっていた。
「あんな夢は打ち壊すのよ」
 私は涙を拭って今日も決心をする。いつも見る、あの悪夢を空想の代物にするために。
 恩返しをして、みんなで笑って楽しんで全力で勝ちを取る。それこそが私が叶える【涙の理由】#1

10/10/2023, 4:06:47 PM