「花の香りと共に」
その日は普段履かないヒールを履いて待ち合わせ場所に向かった。
約束の時間に遅刻しそうで階段をヒールで勢いよく駆け上がる。が、最後の1段で躓き重心が後ろに思い切り傾く。
ダメだ落ちると思いギュッと目を瞑る。
その時、ふわっと花の香りと共に後ろから体を支えられた。
「大丈夫かい?お嬢さん。」
「あ、あぁ、ありがとう…ございます…。」
放心状態の私を他所に美しい所作で私を抱き起こす老紳士。
「支える為とはいえ、女性に対して突然触れてしまった非礼をお詫びしよう。」
「え!あ、いえいえそんな!むしろ助けてくださってほんと、ありがとうございます!」
「怪我がなくて良かった。では。」
あまりに一瞬の出来事だった。
とりあえず友人との待ち合わせには間に合い、用を済ませ、その足で彼女おすすめのBARへ向かう事になった。
カランカラン
「いらっしゃいませ。」
お店の戸を開けると、ふわっと馨しい花の香りと共に髪をキッチリ整え制服をビシッと着こなしたた老バーテンダーが迎えた。
3/16/2025, 10:34:54 AM