—闇に沈む再会—
同窓会の会場である、横浜の洒落たホテルの宴会場に着いた。普段なら入る事が憚られる高級感が漂っている。
今日は十年ぶりに高校時代の友人と会える。それだけで心は舞い上がっていた。
「あれ、水野君!久しぶり!」
エントランスを抜けて受付まで向かうと、学級委員長だった水野が立っていた。
「水戸さん、久しぶりだね。開会の挨拶が終わったらそっちに行くから、後で話そうよ」
「もちろん!挨拶頑張ってね。じゃあ、また後で」
そう言って、中へ進んだ。
私の高校は県内の他の高校と比べると人数は少なく、一学年百五十人程しかいない。
だが会場は、ぎっしり詰まっていた。
「おーい、葉月!」
会場内を見渡しながら歩いていると私を呼ぶ声が聞こえた。声の方を見ると、かつてテニス部で青春を共にした友人達が、手を振っていた。
「花、咲希、美沙!」
久しぶりの再会に笑顔を交わしながら、私達は語らい合った。
気づけば定刻になり、水野がステージの上に立っていた。
「それでは、皆さん集まった様ですのでこれより同窓会を始めたいと思います」
話し声がピタリと止み、全員が水野の方を向く。
「本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。十年ぶりの再会を、どうぞ楽しんで行ってください。では、これから——」
挨拶の途中だった。突然照明が消え、会場内は闇に包まれた。参加者は騒然とし、会場はごった返した。
一分間ほど経過した後、会場はまた明かりを取り戻し、安堵の空気が漂った。
「これで大丈夫だろう」と誰もが思ったその時——。
「きゃー!」
女性の悲鳴。ステージの方からだった。
私はステージを見ると、信じられない光景が目に飛び込んできた。
ステージの上に横たわっている人の姿。胸には血が広がり、何か鋭い物が突き刺さっている。
その姿は間違いなく、私の友人の水野だった。
お題:friends
10/21/2025, 5:50:44 AM