かたいなか

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ビンチョウマグロはオトクなマグロ
お値段安めでクセもなし

キハダマグロはサッパリマグロ
旨味としての酸味が少し

メバチマグロはザ・マグロ
マグロといえば、こんな味

本マグロはもちろん高級マグロ
脂は旨味、赤身もやわらか、トロは溶ける

いろんなマグロ、ぜーんぶマグロ
比べてごらんよ印度マグロに伊達マグロ

…——とある鮮魚コーナーの売り言葉より

――――――

今回のお題は「鱚(キス)」ではなく、「Kiss」とのこと。天ぷらか塩焼きが美味いそうです。
なお今回のおはなしは鱚ではなく鮪、マグロ。

都内某所某アパートに住む藤森という雪国出身者が
ご近所の稲荷神社の稲荷子狐の散歩を任されて
その結果として神社通りの魚屋さんで
お財布の残高がドン底とKissしておりました
(早々のお題回収)

というのもその日の魚屋さん、
愛媛の誇る養殖クロマグロの伊達マグロが2尾と
豊洲直送の本マグロがブロックでひとつ、
ちょうど、入荷しておりまして。

「マグロっつっても、ビンナガかキハダか、メバチかクロマグロか、それだけでも味が違うんだ」
ニッコニコの魚屋さん、尻尾ブンブンの子狐に、マグロの試食用刺し身をポン、ぽん。
子狐としてはどのマグロも気に入ったようで、
これ買って、それ買って、あっちも買ってと
こやこやコンコン、こやこやコンコン。

「子狐。お前の母さんと来たときに、あらためて」
やだ!やだ!いま買って!こやこや。
「ここは、お前のお母さんの馴染みの魚屋なんだろう。取り置きをしてもらえば良い」
やだ!やだ!買って買って!こやこや。
「こぎつね……」

やだやだやだ。やだやだやだ。
コンコン子狐も子供なので、我慢が好きでも上手でもありません。
しまいには稲荷子狐の稲荷秘術で藤森を、ポンポン、ぼやん、威嚇してきますので、
藤森は仕方なく、子狐が欲しがったマグロたちを、

すなわち冷凍キハダの赤身柵1枚と
ビンチョウマグロの切り落とし大入りパックと
メバチマグロの腹側・背中側双方1枚ずつ、
それから愛媛産養殖マグロたる伊達マグロの上赤身とトロの柵をそれぞれ1枚ずつ、
更に、本マグロの上赤身と中トロと大トロの柵を1枚ずつ、大葉と大根のツマもセットで、
保冷用の氷入り発泡スチロール箱に入れてもらって
しめて●万●千と●●●円。現金でポン。

「……」
藤森の財布の現ナマ残高が、お題回収。
一気に減ってドン底とKissした瞬間でありました。

「まいど」
一気にマグロが売れましたので、魚屋さんもニコニコ、にっこり。
「オマケ、付けとくよ」
塩焼きでも照り焼きでも美味い、マグロのカマを箱に1個、2個、一緒に入れてくれました。
「ぜひ、これからも、ごヒイキに」

一時的に残高がドン底Kissしたとはいえ、子狐のリクエストに現ナマで応じた藤森を、魚屋さんは上客候補と見たのでしょう。
それはそれは、もう、それは、とっても良い笑顔をしておったのでした。

「ちゃんと、請求できるよな……?」

領収書きってもらって、あて名に子狐のお母さんと、子狐の住まう神社を書いてもらって、
ちゃーんと封筒に入れてもらった藤森は、
それこそキッスばりに鼻を保冷箱にくっつけて匂いをかぐ子狐を、じっと、見ておりました。

最終的に稲荷子狐、藤森と豪華マグロセットと一緒に神社に帰って、お母さん狐を驚かせた後で、
同じ美味ダイスキーな同志を、強制召喚。
まずマグロカマの塩焼きに柑橘ふって、
ちゃむちゃむ、ちゃむちゃむ。
一緒に美味を堪能しましたとさ。

2/5/2026, 6:25:48 AM