川柳えむ

Open App

 木枯らしが吹き始めた。
 細く枯れ細った老いた木は、そろそろ自分の終わりを感じた。
 それなりに生きて長くこの景色を見てきたし、満足していた。それと同時に、やはり寂しくも思った。
 びゅうびゅうと風は容赦なく吹き付ける。
 枝がもげ、宙に舞った。
 その様子を見て、ああやって空を飛べるなら、いろんな景色を見られるのかもしれないと、少し慰めされたような気持ちになった。
 風はいよいよ勢いを増し、木を根元から攫っていった。


『木枯らし』

1/17/2024, 10:40:43 PM