夏
6月生まれの俺は夏が好きだった。
だが今では、それも「子供の頃までは」というダサい蛇足付きになっているけれども。
別に汗かきでも暑がりでもない自分には、世間の人々がなぜ夏を嫌うのかがよくわからなかったのだが、一人暮らしを始めて、ようやくその理由がわかった。
虫だ。害虫だ。夏の悪夢はあいつらなくしては始まらない。絶対始まってほしいないのだが。
白状しよう。
俺は害虫駆除業者に85000円を取られたことがある。
自分で呼んでおいて「取られた」という言い方をしちゃダメなのかもしれないが、それにしても85000円は流石にぼったくりだ。
せめてふんだくられたと言わせてもらう。
夜の11時、白い壁を伝って部屋を闊歩していたゴキブリくんのことを俺は一生忘れない。
彼らがあの世に持っていった9札の諭吉のことも俺は忘れない。
自分の手中を離れた彼らのことを思いながら、次に出てきた時には、万難を排してでも自分一人で立ち向かおうと誓った俺だった。
6/28/2024, 11:23:07 PM