実は、私は橋の下に生まれた子なんです。言わば鬼子ですよ。橋の下はいつも異界に繋がっていますから、私のお母さんが出産した拍子にうっかりと私を人間界に落としたんじゃあないでしょうか。まあ捨てられたと思ってもどうしようもないので、母親の失敗談として笑い種にして会話に花を咲かせています。
それで、橋の下にいた私を今の父親が持ち帰ったんです。白痴の胤しか撒けないのなら、いっそのこと捨て子を光源氏よろしく教育して、妻になるほどの良い子を育てようと考えていたんじゃあないですかね。ただどうも酔っ払いの戯言だったようで、結局私は父親の妻どころか子どもにもなれず、彼の豚児に喰らいつく鬼となりました。
最近そういう設定を付けて生きていますが、誰も知らない秘密なんて案外自分で簡単に生み出せるものです。誰にも言えない秘密よりかはやさしいんじゃあないですかね。
(250207 誰も知らない秘密)
2/7/2025, 12:46:02 PM