「う゛......寒...」
買い物帰り、突然吹いた風に彼女はスーパーの袋を持って身を縮こませている。
「...あ、見てみて~」
彼女はしゃがむと一枚落ちた葉っぱをつまみ上げる。
「玲人(れいと)とおんなじ色~」
そうやって見せてきたのは茶色の乾燥した葉っぱ。俺の髪色と似ていた。
「似てるね~」
「でしょ~持って帰る」
そう言って彼女は葉っぱをコートのポケットに突っ込んだ。俺が気づいた時には遅く、彼女のポケットから、クシャッと音がした。
「ん?」
ポケットから手を取り出すと、それはまぁ粉々でばらばらと溢れ落ちてきた。
「...!......!...!」
あまりにもショックだったのか口をぱくぱくとさせるだけで、なんだか可哀想に見えてきた。
「せ...折角拾ったのにっ......」
「あ、はは......」
「うわぁ、コートのポケットが......」
次にコートのポケットを見て絶望していた。
「乾燥した落ち葉は割れやすいんだよ」
「......忘れてた...」
「こういう乾燥した落ち葉で焼き芋とか焼いてたよね」
「あぁ、懐かしい」
「懐かしいっていつの時代だよ」
「弥生」
「そこは縄文じゃないのかよ」
軽口を叩きながら並木通りを歩いた。
そこで再び風が吹く。
「うぇっ、寒」
「うぐっ」
マフラーに顔を埋め、また身を縮めている。この時だけ、俺は身長で彼女に勝てる。
「......寒い」
「そうだね」
「.........手繋いで帰った方がいいんじゃない?」
「......え?」
驚いて俺が向くと、頬を赤くした彼女がいた。じっ、とこっちを見つめてくる。これは、稀に見る彼女のデレ隠し。普段こんな風に甘える事がないからちょっと嬉しい。
「...そうした方がいいかもね。はい」
「え、本当?わーい、寒いからポケットに入れるね~」
彼女は嬉しそうに俺の手を取ってポケットの中に二人分の手を入れた。
ガサッ、と音がした。
彼女は静かにポケットから二人分の手を出し、俺のコートに入れた。
「わーあったか~」
「今無かったことにしたよね?」
「ん?」
「いやおい」
ツッコミを入れて、俺達はそのまま並木通りを歩いていった。
お題 「枯葉」
出演 玲人 葉瀬
2/19/2024, 1:35:23 PM