悲しみの輪郭をなぞるように白い花に触れた。細く細く糸を重ねて織った心が、はらはら崩れていくのがわかる。月日は経ち、星は流れて、木洩れ日に翳る夏がやってくる。1年前に地上に落ちた君が、そろそろ空に昇ってゆくのを私は黙って見届けるつもりだ。君のことは誰も知らない。知るよしもない。誰も知らないまま、知られようとしないまま、君は夜の静けさに溶けて、光を求めることもない。庭に埋めた月下美人は、今年も冷たい色を咲かせた。君の面影を永遠に残して。
6/16/2023, 10:35:27 PM