『夫婦』
「今日はいい夫婦の日らしいわね」
「あ?」
妻がにこにこ微笑みながら話しかけてきたっていうのに、柄の悪い返事をしてしまった。今は武具の手入れで忙しかった、そうだ、仕方ない。
「あ、興味ないって顔してる」
つまらなさそうに言われた。だろうな。
十一月二十二日、語呂合わせで『いい夫婦の日』
……だからどうした。そんなことより俺は手入れが終わったら明日の朝餉の仕込みをしたい。ちらりと横目で妻を見ると、こちらを睨みつけているような……
「な、なんだよ」
「別にぃー?」
「何拗ねてんだよ。話なら聞いてただろ」
「そうじゃなくって!」
隣に座る妻。髪につけた花の香りにドキッとする。
「夫婦らしいこと……したいなぁ、って」
まさか妻の口からそんな誘いの台詞が出るとは思わなかった。仰け反ってしまいそうなのを耐える。
「んだよ、それ……かわいすぎるだろ」
武具なんか放り投げ……はしないが、今日はもうやめた。妻しか見えない。肩を掴んで抱き寄せると頬を染めるのがかわいい。たまらない。
「何笑ってるの?」
「別に?いい夫婦の日も悪くないな……って思っただけだ」
ゆっくりと唇を重ねて、さあ、どうしようか?
11/22/2023, 10:50:44 AM