深夜の疼き
女の子は夜歩きからアパートの部屋に戻るなり、タバコを引き出しから一本抜き取ると、胸ポケットに入れていたオイルライター(アメリカのジッポライターではなく、ドイツ仕様の細長い軍用モデル)で火をつけるなり、吸いながら窓辺に座り、テーブルに靴ごと足を組んで乗せた。
時刻はちょうど日付が変わったばかりだった。何か楽しいことをしようと夜の街に散歩に出たのに、途中でバーに寄ってカクテルを僅かに飲んだだけで、ただ歩いただけだった。女の子は次は何をしようかと考えたが、なかなか名案が思い浮かばない。
酒。これはさっき飲んだばかりで、再び飲みたい気分ではない。男でもいれば別だったが。
遅めの夜食。これもナシ。少しも空腹感はなかったからだ。
セックス。これもダメだ。ぜんぜんその気になれないし、何より今から男を部屋に呼ぶのも、男の部屋に行くのも憂鬱だった。
いっそ自殺してみようか、と考えたところでタバコは三本目に差し掛かっていた。死への衝動が静かに女の子の中で切り傷のように疼いていた。窓から飛び降りても良かったのだが、ここは三階で、地上まではあまり高くない。というより、こんな所から飛んだら大ケガするだけなのはバカでも分かる。
女の子は机からタバコのパッケージとスミス・アンド・ウェッソンM60リボルバーを取り出すと、テーブルにそれらを置いてぼんやり見つめた。今ここで頭を撃てば、アパートの住民は全員飛び起きるのだろうかと考えた。もう一本だけ吸おうと箱に手を伸ばした所で、中身が空になっていることに彼女は苛立ちを感じた。
そして機械的に、また乱暴に銃を取ると、銃口を咥えて躊躇なく引き金を引いた。
カチリとシリンダーが回転し、撃鉄が弾く音がしたが、弾は入っていなかった。
女の子はしばらく床に倒れ込んだ後、ゆっくりと起き上がり、灰皿に水をかけると、下着だけになり、ベッドに倒れ込んで朝まで眠った。
10/20/2023, 12:34:42 PM