どこかの人

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「お母さんはどこ、、誰か教えてよぉ」

前が歪んでいて

鼻をすすりながら

何が正解かも分からない

ただ僕には歩く選択肢しかなかった

「どーしたの?迷子?」

突然声をかけられた

顔を上げ背後に目を向けると

同い年のような女の子が笑顔で僕を見つめていた

空はいつのまにか茜色が広がり

僕は光に照らされている小さな公園にいた

「もう大丈夫!!私がいるからね!」

そう言って錆びたブランコを指さし

「一緒に乗ろうよ!!」

ブランコを漕いだり

滑り台で遊んだり

色んな話をしながら公園の周りを歩いた

5時のチャイムが鳴ると同時に

警察の人とお母さんが公園にやってきた

「もう!どこ行ってたの?」

と泣きながら僕をギューって抱きしめてくれた

お母さんの匂いだ

なぜか少し安心する

「隣町にいるとは見つかったのは奇跡です!」

警察の人はそう言っていた気がした

「あれ、、あの子、どこいったのかな」

強くて優しくてまるでお母さんのようで

こんな悲観的で弱虫な僕を笑顔にしてくれた

そんな君にお礼を言いたかったのになぁ

また会えたらいいな



長い年月が経ち

僕は教師になっていた

生徒たちの見本で尊敬される人

まるでお母さんのようだ

人事異動で偶然にもあの町へ異動になった

新天地で生活に慣れてきた頃

ふとあの子のことを思い出した

すると体が勝手にあの公園に向かっていた

そこへ着いたと同時に衝撃を受けた

目の前にはマンション群が連なっていた

もうあの公園を見ることは出来ない

少し寂しくなった

「あの子はまだこの町にいるのかな?」

「あの頃のお礼を伝えたいな」

桜が散りだんだん暑くなる今日この頃

君と歩いた道を踏みしめながらそう懐古した



(君と歩いた道)

6/8/2025, 1:15:19 PM