Morita

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「やっぱり外で食べるミスドが一番だよなあ」

右手にエンゼルフレンチ、左手に黒糖ポンデリング。ミズキはそれを交互に一口ずつかじって、和と洋を楽しんでいる。なんて贅沢な。

「レイも食べなよ」
「いいよ。それより話ってなに」
「まあまあ」

まったく。急に公園に呼び出されて、来てみたらベンチでドーナツ食べてるだけじゃないか。

私は共通テスト対策の問題集にペンを走らせる。来週の試験までに、もう一周読んでおかなければいけないのに。

「ミズキだってC判定だったんでしょ、のんびりしてないで勉強したらむぐ」

甘々な糖衣と、サクホロ食感のドーナツが私の口の中でほどける。ミズキが私の口に押し込んだのである。

「やめてよ、喉乾くじゃん」

そう言いつつ、久々のドーナツの美味しさに思わず口元がゆるむ。
それを見たミズキはニヤニヤして、

「ほーれ、甘々ドーナツにおぼれるがよい」
「んふんふ……んふ」
「うまいか」
「んふふふ」
「よーしよし」

シャッターの音。ドーナツを頬張る私を、ミズキが撮っている。

「インスタあげるの?」
「ううん、これはあげない」

私の写った写真を眺めて、ミズキは満足げである。
冬晴れの日差しが、寒さで赤くなったミズキの頬を暖かく照らしている。

「これでまた頑張れるわ」
「え?」
「なんでも」
「なにー」
「レイもあんまり張り詰めすぎないようにね」

ミズキはエンゼルフレンチの最後の一口を食べ切ると、ベンチから立ち上がった。

「じゃ、私は塾行くわ」
「え、話って」
「別に。レイを餌付けしに来ただけ」

ミズキは私の肩をぽんぽん叩いた。

「色々落ち着いたらさ、またゆっくり話したいな」
「おうおう私もだよ」

私もミズキの肩をぽんぽん叩き返した。
それはなんだか温かくて優しい時間で、ミズキと別れて家に帰った後も、その温かさは胸の内に残っていた。

【お題:冬晴れ】

1/6/2025, 12:59:55 AM