Frieden

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「ごめんね」「終わりなき旅」5/29、30

はぁ……参ったな!!!一体どういうことなんだ?!!ありとあらゆる手段を駆使しているというのに!!!アイツと連絡がつかない!!!

アーカイブ管理室から脱出した旧型の宇宙管理機構の一部のおかげで!!!ボクの管轄内にある宇宙がエラいことになってしまったというのに!!!

こうなったらもう現地に突撃するしかないね!!!
現在のこの場所の時刻は午前1時34分。ニンゲンたちはもうとっくに眠りについている!

彼らを起こさないように静かに突撃しないと、だね。
……キミも、いい夢を見てね。
おやすみ。

夜の挨拶を済ませたボクはアーカイブ管理室に向かった。

01110011 01110000 01100101 01101100 01101100

あれ、おかしいな……アイツの情報が検知されないぞ?!
アーカイブ管理士が他の場所に用事で席を外しっぱなしなんてところは見たことがない!!

……もしかして通達も流せないほどのやらかしをしてクビになったとか??そんなはずはないだろう!

まあとにかく!!誰がいようがいまいがボクはここに用事があるから入るぞ!!!

「こらーー!!!持ち場を離れて何して───あれ???」
……初めて見る顔だな。まるで桜餅をそのまま公認宇宙管理士にしたかの如く可愛い……ボクには及ばないが!

「わぁ、あの、えとぉ……!」
「驚かせて悪いが、単刀直入に聞く!!!」
「とんでもないことをしでかしてくれたのはキミか?!!」

「あ、あのぉ……。」
「ん???」
「あなたがマッドサイエンティストさん、ですかぁ……?」

「そうとも!!!ボクこそコードネーム『マッドサイエンティスト』だ!!!よろしく頼むよ……じゃなくて、まぁいいや。」
「キミの名前は?」

「あ、わたしは『おまじない』といいますぅ。よろしくおねがいするのですぅ!」
「おまじない、か……どうぞよろしく!!!」

「あのぉ……。」
「ん???」
「サイン、頂いてもいいですかぁ……?」

「さいん???あぁ、いいよ???」
「わぁ!ありがとうございます!」

「あと、握手して頂いてもいいですかぁ……?」
「いいよぉ???」
「わぁ〜!!!」

「あの、実はぁ……。」
「なんだい???」
「実はわたし、あなたをすっごく尊敬しているのですぅ!」

「あなたは我々宇宙管理機構の頂点!感情型でありながら生まれてからたった2年で公認宇宙管理士の資格を取得して!おまけに仕事量も一番多い!!」

「よくご存知で!!!」

「それに!いつも笑顔で平和主義!多数のトラブルも現地まで赴いて鮮やかに解決されるのですぅ!!」

「ボクはマッドサイエンティストだからね!!!そのくらいお茶の子さいさいなのだよ!!!」

「まさかキミがボクの大ファンだったなんてね〜!!!まぁ、多分ボクのファンじゃない管理士はいないかなあ!!!ハハハ!!!」

「とにかく!!!さっきは大きな声を出してごめんね!」
「ボクのファンに会えて嬉しい、が……まさかボクをおだてて責任から逃れよう、なんてことは考えていないね……?」

「えぇ?!そんなこと考えてもいないのですぅ!第一、わたしはここに来てからまだ4時間しか経っていないうえ、一緒にお仕事をする方ともお会いしていないのですぅ。」

「ふーん???……てことは、まだ業務内容すら知らないんだよね???」
「はいぃ……。」

「それならますます申し訳ないことをしたね……。悪かった!」
年少者の頭を撫でつつボクは考えた!
まずは引き継ぎができるアイツを───おや???

「おい、マッドサイエンティスト!!アーカイブ管理室への入室許可は得たのか?!」
「キミこそ持ち場を離れて一体何をやっていたんだ?!!」

「今はお前に構っている暇などない!」
「ボクこそ遊びに来たわけじゃないもんね!!!」
「「事件でそれどころじゃない!」!!!」

「えーと、あれ……?」
「事件?何を言っている?お前が犯人だろう?」
「はぁ?!!」

「……でも、なんとな〜く話は分かったよ。」
「どういうことだ?」

「その前に、おまじないくん、彼を紹介しておこう!!!」

「彼はね、アーカイブ管理士の『重い蓋』!ボクよりちょっとだけ後輩!気難しいが真面目でいいヤツだから安心したまえ!!!」

「あ!今日からアーカイブ管理室に所属の『おまじない』なのですぅ!『重い蓋』さん、よろしくおねがいするのですぅ!」
「あ、あぁ。よろしく頼む。」

「おまじないくん、今からのトラブル対応をよく見ておくといい!!!アーカイブ管理室でこういうことは滅多に起こらないが、備えあれば憂いなしだよ!!!」

「はい!」
「よ〜しよし、いいお返事だ!!!」

「では、話を戻そう!!!」

「まずは重い蓋くん、キミの話を聞こう!!!」
「……悪いが今から会議がある。これに目を通して『静かに』待っていてくれないか?」

えぇ〜、でも仕方ないか。
「おまじないくん、こっちに来たまえ!!!レポートのいい見本だよ!!!」

「これは……。」「ふむふむ。」「えっ」「はぁ?!!」
書かれていたことをまとめると、色々と話が噛み合わない理由がわかった。

①数ヶ月前にアーカイブ管理室から旧型の宇宙管理士が行方不明になっていることが発覚
②持ち出された履歴がないことから事件・事故両方の可能性で捜査(この時彼も被疑者の一員として位置付けられ、先程まで外部との接触ができなくなっていた)
③アーカイブ管理室のセキュリティシステムに不正アクセスがあることが発覚
④アクセスログを解析すると、アクセス元がボクであることが判明
⑤現在、コードネーム『マッドサイエンティスト』の公認宇宙管理士を捜索中

「ボクがそんなことをするわけがなかろう?!!」
「わたしもそう思うのですぅ。」

「というかさ!!!仮にボクがこの事件を起こしていたとしてだ!!!後始末が雑すぎる!!!」

「例えばでいうと、」
「今この部屋にはキミとボクがいるだろう?!!」

「ここにこの部屋にいる者のデータがリアルタイムで表示されているんだが、ここをこうすると……。」

「あっ!マッドサイエンティストさんが『いない』ことになっているのですぅ!」
「この通り!!!データの改竄ができる!!!」

「真似しちゃダメだよ?」
「はいっ!」

「他にも!!!ここを書き換えるだけで……。」
「わたしがふたりいることになっているのですぅ?!」
「こういうこともできちゃうのさ!!!」

「念を押すが、真似しないでね?」
「はいぃ!」

「おそらく、犯人はボクをスクラップにするためにこういう技術を使って、あたかもボクが悪いことをしたかのように装った。」

「だが、本物のボクであればログを残すなんていうヘマをするわけがない!!!誰だかわからないが詰めが甘いな!!!」

「それでもイマイチよく理解できないのが、犯人の目的だ!!!」
「むむぅ……。」

「この可愛くて賢いスーパーなマッドサイエンティストたるボクを失うのはどう考えても宇宙にとっての損失だからね!!!」
「その通りなのですぅ。」

「おい!」

「あ、もう会議は終了かい?!!」
「さっきから聞いていれば……全く碌なことを話していない!」

「おまじない……って言ったか?あんた、コイツから変なこと吹き込まれていないだろうな?」
「はい!吹き込まれてません!」

「いい返事だ!!!可愛いねぇ〜!!!ボクの大好きな桜餅をあげちゃう!!!」
「ありがとうございます!大事に飾りますねぇ!」
「美味しいよ〜!!!ほら、食べてごらんよ!!!」
「新人に餌付けするな!」

「はぁ……お前のせいで碌でもない目にあった。」
「悪かったよ!!!」

「でも、キミも分かっているんだろう?」
「ボクがこの事件の犯人じゃない、ってことが。」

「……ああ。お前のやることなすことは好まないが、それを加味してもお前が起こしたことではないのだろうとは正直思っている。」

「……お前はこんな雑な仕事をするやつじゃないからな。」

「ただ、『証拠』がある以上、便宜上とはいえ今でもお前が犯人であるという認識を変えることはできない。そのうちそっちにも捜査が入ることだろう。」

参ったな……。
あの星に拠点を作ってから少ししか経っていないのに……。

ニンゲンくんと一緒に、行きたい所もしたいこともあったんだけどなぁ。

最悪の事態に備えて、情報と「スペア」を更新しなくては。
……いや、この情報の移動も監視されているんだろう。
だから下手なことはできない。

だが!!!ボクはキミのいる星に戻りたいんだ!!!
この事件が解決したら、協力してもらったお礼としてのんびりと終わりなき旅をすると決めているからね!!!

「というわけで!!!急用を思い出したから失礼するよ!!!」
「急に喋るな!」
「ま、また会いましょう!」「あぁ!!!必ずね!!!」

「……嵐のようなやつだ。」
「あっ、あのぉ……?」
「どうした?」

「マッドサイエンティストさんを疑いたくはないのですが……。最後、変な言い回しをされてましたよね?」
「ん?あ、確かにそうだな。」

「『急用』を『思い出した』……?」
「まさかあいつ、本当は事件の犯人だったのか……?」
「こうなったら、こっちも本気を出すしかないな……。」

「おい、おまじない!念のためこのことを本部に伝えてくれ。」
「はいっ!」
「それから……」

「あいつを追跡して確保してくれ。」
「追跡して確保……ですかぁ?!」
「ああ、その通りだ。」

「なるべく早く、下手に傷つけずに頼む。」
「かしこまりましたぁ!」

……あぁあ、引き受けてしまったのですぅ……。
マッドサイエンティストさんが管理する宇宙の数は膨大なうえ、特殊空間も探すとなるとキリがないのですぅ……。

何かいい方法はないのでしょうかぁ……?
い、今はとにかく、本部の皆さんに上手にお伝えしないと!
わたしもお仕事、頑張るのです!

5/31/2024, 10:29:40 AM