ヨッカ

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お題『君からのLINE』



 ポコン、と傍から通知音。
 何かと思ってスマホへ視線を落とすと、友人からLINEが来ていた。

『た』

「……んん?」

 思わず首を傾げる。
 ロック画面に届いたメッセージとして表示されていたのは『た』だった。どこからどう見ても『た』だ。『た』でしかない。
 とりあえずロックを解除してアプリを開いてみる。昨日までの話題を『今日』と区切った下には、やはり間違いなく『た』と送られた一文字だけが鎮座していた。

「誤爆してる……?」

 けれど、それにしてはなんだか取り消すまでが長い気もする。
 一体どういうつもりなんだろう。さっぱりわからない。
 まあ、何かと変なことをするのが好きな友人である。よくあることか、と電源ボタンへ親指を掛けたところで、左下に新しい吹き出しが現れた。

『ん』

「……んんん??」

 今度は『ん』だ。こちらも一文字だけ。
『た』と『ん』。
 二つ並んだ文字の意味はわからないが、少なくとも誤爆ではないらしい。
 ただただ微妙な顔をして見守るしかない私の前で、既読に気づいたらしい文字は次から次へと増えていく。

 少しして『!』の文字が連打され始めたので、これでおしまいなんだろうなと画面を指先で弾いた。
 改めて送られた文字を上から見返してみる。

「……あ」

『た』『ん』『じ』『ょ』『う』『び』
『お』『め』『で』『と』『う』『!』
『!』『!』『!』『!』

「そっか、私、今日……」

 やっと意味のわかったそれは、十一文字に分けて贈られた祝福の言葉。
 思わずスマホを握っている手に力が籠る。自分でもすっかり忘れていたけれど、今日は私の誕生日だった。
 いつも大雑把で色々忘れているのに、こういうことだけはちゃんと覚えている。本当に、ずるい友人だ。
 だからって、一文字ずつ送る理由はさっぱりわからないけれど。

「……ふふ。絶対そんなにびっくりマークいらないでしょ」

 ぼやけた視界を誤魔化すように呟いて、『何かしてほしいことある!?』と送られてきたメッセージに『ありがと』と返した。

9/15/2024, 8:01:53 PM