かたいなか

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「8月22日が『裏返し』で、今回が『向かい合わせ』。3月13日は『ずっと隣で』だったな」
他に類似のお題あったっけ。12月の「逆さま」?
某所在住物書きは今回も今回で、去年の投稿分を確認しながらついでに台風の動向を辿っている。

鏡2枚を使えば向かい合わせの合わせ鏡、
顔ふたつを使えば向かい合わせの「ルビンの壺」。
磁石を向かい合わせにすればリニアかモーターか。
「隣り合わせ」や「背中合わせ」は?
天才と狂人は云々に関しては「紙一重」だったか?

「悲報。物語が浮かばねぇ」
毎度恒例。物書きは大きくため息を吐く。
「……そういや台風の進路、初期から大分ズレたな」
日頃の防災意識と臨時の準備・備蓄補充は向かい合わせ、とも言えよう。特に台風増える今の時期は。

――――――

下がらない夜の気温、続く熱帯夜、猛暑こそ減ったものの常時夏日から真夏日の気温帯。
8月の終わりは残暑との戦いですが、暑さゆえに冷たいアイスやラムネが美味。 快不快が向かい合わせの晩夏、いかがお過ごしでしょうか。
冷々麦飲料のオトモは甘じょっぱいアスパラ肉巻き派の物書きが、こんなおはなしをご用意しました。

最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしており、
そのうち末っ子の子狐は良き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
稲荷のご利益ゆたかなお餅を作って売ったり、お母さん狐が店主をしている茶っ葉屋さんで看板子狐をしたりして、世界と人間をお勉強しています。

今日は友達で和菓子屋さんの化け子狸のために、ペット用和菓子の試作品のお手伝い。
『人の和菓子だけでなく、犬用猫用、狐用狸用も、和菓子屋の技術で製作してみてはどうだろう』
ひょんなことから閃いたポンポコ子狸、アイデアを店主のお父さん狸に言ってみたのです。
『面白い。ひとつやってみなさい』
何事もまずやらせてみる方針のお父さん狸。ポンポコ子狸の挑戦の背中をポンと押しました。

人間も食べられる鶏肉、人間も食べられるカボチャ、ニンジンにメバチマグロにお芋さん。
熱を通してよくよく潰して、裏ごしして、かわいい練り切りに整えて、まず試作第1号の完成。
ポンポコ子狸、試食を友達であるところの子狐に、まずひとくち、お願いしたのですが。

子狐が試食のセカンドオピニオンとして、自分のとこのお得意様たる人間も1人呼んじゃいまして。

「おいしい、おいしい!」
がつがつがつ、ちゃむちゃむちゃむ!
コンコン子狐、試作品を怒涛の勢いで堪能。
マグロのフィッシュ練り切りより鶏肉のチキン練り切りがお気に召した様子です。
「もっと甘く、舌触りなめらかに……!」
がつがつがつ、ちゃむちゃむちゃむ!
子狸の試作品に、更なる改善を提案しました。

「素材の食感が残るくらいも面白い、とは思う」
対する子狐のお得意様、藤森という名前の人間は練り切りをお吸い物に浮かべ、つみれ汁の様相。
塩不使用ゆえに人間にとって完全薄味なそれですが、汁物の具には最適です。
「肉の量と糖分のバランスも丁度良い。個人的には、このままでも優しい甘さで美味いよ」
子狸の試作品に、現状維持を提案しました。

で、困ったのが子狸なのです。
もっと甘いのが良い――いやバランスが丁度良い。
もっとなめらかに――いやこのままが面白い。
1匹と1人の提案が、向かい合わせになってしまって、ぜんぜん同じ方向を向いてくれません。
子狐の左と人間の右、試作品製作者の子狸は、いったいどっちを向けば良いのでしょう?

「わぁ。どうしよう……」
向かい合わせ、向かい合わせ。
試食の感想が左と右で正反対。
ポンポコ子狸、感想をメモする手が完全に止まります。思考も迷子でごっちゃです。
「感想が多い、いや、感想が少ない……?」
向かい合わせ、向かい合わせ。
和菓子屋の子狸は試作のペット用和菓子と自分のメモ帳を見比べて、見返して、十数秒後、
ポン。頭がフリーズしちゃってコロリン。ひっくり返りましたとさ。 おしまい、おしまい。

8/26/2024, 6:29:27 AM