UT二次創作
またな、と言われる前に手をとった。
サンズは、ぼくにとって他でもない、大切な存在だった。
人生を変えてくれたのだ。
彼はなにもしてないかもしれないが、とにかく。この世に存在してくれた、という時点で、ぼくの人生は救われていた。
サンズは片足をペタ、ふみこませ、ゆっくりふりむくと、ぼくを見上げる。
「どうした?」
サンズが同じ状況で、しかし相手はぼくでなく彼の弟だったら、もっと気の利いたギャグなんかを言って、場を和ませて、話しやすいように空気作りをしたりしてくれるハズだ。
しかし相手がぼくで、ぼくだから、
ぼくが切羽詰まった顔をしていても、サンズは固まり、ただ、どうした?という他ないんだろう。
「……あー。コントローラーの接続でも悪い?」
ぼくならではなんだろう。
ぼくがあんまりに想像力がなく、サンズについての妄想がなかなかに広がらないから、こうなっているともしらない。
今回の場合ぼくは、無知なサンズが好きだ。
かいかぶりすぎだと思うのだ。
「うーん。芸人としちゃ、こういう沈黙はよくない。
どーにかして、話題のタネをつくらなきゃなんないな。だけどあいにく、最近ネタに困ってる。
おっと、まてよ、逆立ちしてみたら、どーにかなるかな?
ネタ、タネ……ってな。いや、ごめん。
オイラ、アドリブニガテなんだ」
サンズはきまずい状況に打たれ弱いとぼくは思う。
サンズはすぐギャグに走ったが、失敗だったらしい。
サンズはよく、ぼくと話す時だけは、沈黙をつくるし、頻繁に話題を変える。
サンズはぼくが繋いでいないほうの手で頭をかいて、ぼくを見上げるのをやめた。
サンズの背は低い。
「あー……」
こういうところは、非常に可愛いと思う。
サンズは、思ったよりも素直で、思ったよりも、思ったことがすぐ表に出るタイプなんだと思う。
しかし、場を乱すようなことはしっかり言わない。
常識人というやつ。
しかし、サンズならではの強さもあるのだ。
「なあ、アンタそうとう……握手がすきなんだな?」
サンズでなければしない。
サンズを困らせたまま、サンズに嫌われたっていい。
ぼくは、ただの第三者で、ぼくはぼくの身体や個人的な部分をサンズに愛されたい、認知されたいとは思わない。ぼくはただの第三者だ。
サンズとは相容れないニンゲンで、とくに特徴もないニンゲン。
いつか、こんなふうに二次元世界のキャラクターを三次元に呼ぶことができるようになるといいなと思う。
6/17/2024, 10:24:42 AM