屋上に居て下を眺めても誰も助けてくれる訳ではないことをどうして気付かなかったのだろう。足をかけてもなお人の気配すらしないこの屋上に何を期待しているのだろう。そういう場所を選んだのは私なのに、心の底では助けて欲しいと思っているのか。
私の人生はドラマではなく漫画でもない。私の人生の主人公は私だけど、放映されても誰の心も掴まない。怖くないわけでも引き返したくないわけでもない。ただ、帰るのにはもう一度柵を登らなければいけないから、こんな山奥から帰るにはタクシーをつかまえないといけないから、帰ったところで部屋には誰もいないから、それを考えると面倒だなと思ってしまう。死にたいと思って来たんだしな、と思いながら死ぬ理由をひとつ増やす。ああ、じゃあもういいか。怖いな。でも帰るのもこれからの生活も考えたくない。疲れたな。ほんとに疲れた。
「今までありがとう」と小さく呟いた彼女はスマホを前に投げそれを追うかのように足を踏み出した。
10/28/2025, 11:20:35 PM