白眼野 りゅー

Open App

「また明日」

 と僕が言っても、ひねくれた君は「また明日」とは返してくれない。「うん」とも言ってくれない。


【「またいつか」はいつか必ず】


「私は嘘が嫌いなの。明日会えるかどうかは約束できない。会えなかったら、私は嘘つきになる」

 そんなわけで、僕の「また明日」に君は「じゃあね」と返す。それが僕たちの常だった。

「……僕、もう行くから」
「…………うん」

 けど、今日だけは別だ。僕はこの町を離れる。新幹線と電車を乗り継いで、遠くに、遠くに行く。往復だけで一日がかり、軽率に「また明日」なんて言えるはずもない。君の言葉じゃないけど、それは守れない約束で、明確に嘘になる。

「じゃあね」

 だから、君と同じように、そう言った。初めて、そして最後になるかもしれない、同じ言葉による別れ。……と、思った僕の腕を掴んだ君は、いつもの冷静な表情からは想像もつかない顔で

「……またいつか」

 言葉と共に、君の目から涙が零れた。

 嘘が嫌いな君が、嘘つきになるリスクを背負って放った言葉。真実にしてやるという強い意思と、気高さを持った言葉。いつ来るのか分からない「いつか」を、絶対にいつか来ると信じさせてくれるまっすぐな言葉。

「うん、またいつか!」

 嘘つき未満の二人が、手を離す。

7/23/2025, 3:16:12 AM