カミハテ

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1年後


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「あ〜っはっはっは〜!!」
「ちょっとまこと〜笑いすぎでしょ〜」
「いやいや、だってさ!ひっひっひぃ〜、涙出てきたっ!」
ペットショップでシャンプーしてもらった、飼い犬のジョン。
その姿は、シャンプー前とは似ても似つかない姿になっていた。
シャンプー前は、シュッとしていた。
だが今は、ふとっちょのおぼっちゃまみたいになっている。
体は太っちょなのに、目はきゅるるんとしているところが愛らしい。
が、同時にとてつもなく面白い。
見た目だけでも面白いのに、
ジョンの虚無感溢れる表情が面白さを倍増させていた。
ひとしきり笑った後、ジョンを受け取り、かごへいれる。

「ありがとうございました〜!」
店員さんに見送られ、ペットショップを後にした。

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家に帰ると、ジョンをかごから出してあげた。
とことこと歩く太っちょのおぼっちゃまスタイルのジョン。
相変わらず面白い。
ずっと見ていられる。
「まことー?もうすぐ、ジョンのごはんの時間だから用意してあげて〜」
「はーい」
まことはキッチンへ向かった。
ポットに水を注ぎ、スイッチを入れる。
しばらくすると、シューッと言いながらポットがお湯を沸かし始めた。
ジョンは1週間前にお迎えしたばかりの子犬だから、
ドッグフードをお湯でふやかしてからあげるようにしないと、
上手く飲み込めないんだとか。
ふと、足に何かが当たったような気がした。
下を見ると、ジョンがまことの足に鼻を擦り付けている。
「かっわいい〜!!」
まことはしゃがんで、ジョンをなでくり回した。
しばらく撫で回した後、もう既にお湯が沸いていることに気づく。
立ち上がって皿にドッグフードをついで、
そこにお湯を注ぐ。
タイマーを15分にセットし、スタートさせた。
お湯でドッグフードをふやかすのは、
生後半年ぐらいまでらしい。
きっとあっという間なんだろう。
ジョンの誕生日は3月だから、9月で生後半年だ。
犬の半年って、人間にしたら何歳なんだろう?
犬の1歳は人間の20歳らしいから、その半分かな。
そうか、たった半年でまことの年齢にぐっと近づき、1年も経てば追い抜かれるのだ。
ジョンが1歳になったとき、
はたしてまことはどんな自分になっているだろうかと考える。
自分を誇りに思えるようになっているだろうか。
今よりも良い自分になれているだろうか。
なれていたらいいけど、きっとなれていないだろう。
だって今まで生きてきた中で、成長したことは身長と体重くらいで、内面的な成長はないから。
これまでだってないんだから、これからもないだろう。
生まれたときから今までの間で、
内面的に成長する感覚がわからないままだから、
これから先も成長したくてもできない気がする。
ごちゃごちゃ考えていると余計にごちゃごちゃしてくる。

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「ピピピピピピピッ」
タイマーがなった。
まことは皿をリビングまで運び、ジョンの目の前に置いた。
バグバグと食いつくジョンの様子からは、元気いっぱいで健康であることがよくわかる。
これから先、1年後も2年後も10年後も20年後もずっとそうであってほしい、死ぬまで一生一緒にいたいと思った。
だが、そうはいかないことはわかっている。
ずっと一緒にいられないからこそ、そのぶん100年分の楽しさをぎゅっと詰め込んだ15年間にしてあげたい、そのためにたくさん楽しい思い出を共に過ごしたいと強く思ったのであった。

6/24/2024, 2:39:16 PM