ぎゅって抱き締めて。
お母さんにそうお願いしたら、僕のことをそのあたたかな腕の中に抱き寄せて、僕が満足するまで離さないでいてくれた。
頭を何度も撫でてくれたし、大好きだよって何回も言ってくれた。
柔らかなお母さんの感触に包まれていると、ずっとそうしていたくなる。
でも僕は意を決して顔を上げ、お母さんの腕の中から離れた。
「もう、大丈夫」
もう僕は充分にお母さんを堪能したから。
「次は産まれてくるこの子を、ぎゅってしてあげてね」
そう言ってお母さんの大きなお腹をさする。
本当はもっと子供のままでいたかったけど。
でも、お兄ちゃんになれることも楽しみだから。
僕は子供のままをやめて、一歩大人になった。
【子供のままで】
5/13/2023, 4:47:00 AM