「残り半年も持つか…。」
ある日、僕は余命宣告を受けた。
「今日から宜しくね。」
記憶に残る中で一番古いものは、施設に預けられた日だった。孤児院の院長先生に出迎えられたのを覚えてる。
「ここでは皆家族よ。」
まるで絵に描いたような、優しさがそこにはあった。でも、それはすぐに地獄へと変わった。
この孤児院は、劣悪な環境下にあった。職員達は所構わずに酒を飲み、煙草を吸った。泣いたり、喧嘩をすると、黙るまで暴力を振るわれた。だから、ここの子供達は目が死んでいた。幸いな事に、僕は幼いながらに不幸耐性がついていたらしい。そのおかげで、ある程度の事には動じなかった。
「アンタの親は、アンタが嫌いだから捨てたんだよ。」
酷く酔っ払った職員が、僕にそう言った。その時、少しだけ胸が痛んだ気がした。
中学を卒業すると、孤児院から解放された。しかし、長年の暴力からか、僕は孤児院を出てすぐに心臓発作で倒れた。目が覚めると、病院に居て、余命宣告を受けた。
僕の命は、後何日持つのだろうか。病室の天井を眺めながら、そう思った。自分でも不思議だ。ずっと僕は、死にたいんだと思っていた。でも実際は、まだ生きたいと願っている自分が存在している。一人が寂しいと感じる自分が居る。
「まだ、終わらせたくないな。」
ふっと溢れた言葉は、自分のものとは思えぬ程、弱々しかった。
僕はこれから毎日祈るのだろう。終わらせないで、まだ生きさせて。と。
11/28/2024, 3:44:15 PM