ゆじび

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「未来への船」



未来。
未来ってなに?
車が空を飛んでいるの?
宇宙に簡単にいけるの?
最新のゲーム機が揃っているの?
皆が幸せなの?
動物園、水族館はないの?
恐竜が普通に生活しているの?
戦争がないの?
寿命がなくなるの?
皆が笑顔なの?
分からない。
だから楽しみだ。

未来に向かう船に乗って未来にいけるの?
沢山のひとを乗せて未来に行くの?
じゃあ乗れない人はどのくらいいるの?
未来にいけない人は沢山いるよ。
僕のおじいちゃん、おばあちゃんは?
他にも高齢の方は?
国のために戦って、国に全てを託した人達は?
皆が笑える様に、全身全霊をかけた人達は?
国のために未来を捨てた少年少女は?
暗い世界に子供を送り出した人達は?
物事を進めるために問題を見つけた人達は?
自分の価値観を隠し通した人達は?
皆が笑える未来の港へ船を運ぶための海になった人達は本当に心から良かったって笑えるの?
笑えないよ。
きっと。笑えないよ。

自己犠牲が座右の銘のヒーローだってきっと
自分を犠牲にしてまで生かした人達が自分を置いて未来に行っても心から「良かった」なんていえないよ。
自分は未来のために尽くせて良かった。
自分は未来に行くほど価値はなかったんだ。
って思えるほど人は人が好きじゃないよ。
しかも知らない人?
そんな人のためにヒーローが死ぬ事になるなんて馬鹿げてる。

きっと僕に未来に行く船に乗る番が来たとしても、
僕は船に乗れない。
僕は沢山の人が作り出した海を、なにもしていない僕が乗るぐらいなら僕を支えて来てくれた人に乗ってもらいたい。
誰だって言い訳じゃない。
僕は僕の身内を乗せる。
そんなもんだ。
誰だって他人よりも自分を身内を大切にする。

国のために戦って、散って行った人達は沢山の人を奪って守った。
国のために。世界のために。
綺麗事を並べたかのような戦いは戦国時代の様に人を魅了する事も出来ないし、何にも魅力がない。
誇りを持って武士として散ることもない。
昨日まで国民として未来に向けて進んでいたかもしれない。
目標を達成して達成感に浸っていたかもしれない。
そんな人達は、戦場に行った。
家に帰りたい。そんな事をいつも想いながら。

そんなに過酷な戦場に子供を送る親の気持ちはどうだった?
今では分からない。
分かるのかも知れないけど、人は知ろうとしない。
ただ一つ言えるのは、親はいい気持ちではなかっただろう。行ったらきっと死んでしまう所に可愛い子供を送り出す。
なにか方法が無いのか探しただろう。
でもどうする事も出来なかった。
それが現実だった。

誰だって自分の子供が可愛いだろう。
国のために。世界のために。殺せ。
と言われて殺せる人はきっと両手で数えきれるだろう
親が嫌い。そんな気持ちはきっと大きくなったら
間違いだったと気付くだろう。
でも国のために、送り出せ。そうさせられるんだ。


そうして犠牲があった。
だから今の世界がある。
そして、その犠牲の海の向こうに未来がある。
未来に行きたくない。
そういうことではない。行ってみたい。
でも僕は沢山の人の人生を知らないまま、
犠牲の海を渡れない。
そんな勇気僕にはない。
だから僕は歩くことにする。
海辺まで歩いて、色んな人生を知ってから
船に乗って未来に行く事にする。
そうしたら僕にも渡れる気がするから。

どんなに人を羨んだって憎んだって仕方がない。
だったらその人を知ればいい。
そしたら少しでもその人に近づいた気がするから。

5/11/2025, 1:53:22 PM