時雨 天

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1件のLINE


お風呂上がり、髪の毛も乾かさずにかれこれ10分くらい、スマホの画面と睨めっこをしている。
相手になんて返事を返せばいいか悩んでいた。
普通に返せばいいと思うんだけど、その普通がなかなかできない。
深いため息を吐いて、ベッドに腰を下ろし、スマホを枕元に投げる。

「無理っ」

首にかけていたタオルで、髪の毛を乱暴に拭いていると、LINE独特の音が鳴ったので、思わず飛び上がってしまった。
慌てて枕元に投げたスマホを手に取り、画面を見る。
そこには「新着のメッセージがあります」と表示されていた。
恐る恐る開いてみると――

『既読スルーしないでよー、んでどうする? 今度の土曜日のデート』

どうするもこうするもデートしたいに決まっている。
だがしかし、毎度デートは緊張する、心臓が飛び出そうになる。
上手く喋られないし、何もないところで躓くし、服装は変じゃないか不安だし……
そんなこと考えている暇はないっ。何か返さないと、何か返さないと、何か返さないと――

『OK』

かわいいウサギが、OKと言っているスタンプを送信。
そして、即返信が返ってきた。

『OKだけじゃわからない、何時にどこに行く?』

ずっと自分の返信を待っていてくれたんだろうなぁ……即返ってきた。
そっけない文章に見えるけど、きっと画面の向こうで、腹を抱えて笑っていると思う、自分の恋人は。
また返信を返さなきゃいけないから、大変だ。電話の方が早いかな?
いや、電話は電話で緊張する。どうしたものかな――

7/11/2023, 12:30:03 PM