ないものねだり
冷たい風がトンネルを通り抜け、私の髪を撫でる様に過ぎ去っていったと同時に私の背筋が凍りついた。
後ろを見てはいけないと本能で感じる。
来た。ないものねだりが。
全力疾走でこの場を去りたいが、無理だろう。一歩でも動いたら腰が抜けて倒れ込んでしまいそうなのだ。
浅く呼吸を繰り返しながら、恐怖が過ぎるの待った。
目を瞑っているがなんとなく感じ取れる。私の顔と体をジッ…と見ている。欲しいものがあるか、じっくりと選んでいるのだろう。
我慢が限界に達し、気を失いかけたその時、空気が一変した。
居ない…。
よかった…私、生きてる。
3/27/2024, 9:55:44 AM