「相変わらずお前はのろまだな」 待ちくたびれたのだろう男の言葉に女は穏やかに笑う。「あなたがせっかちなんですよ」 女の言葉に男は少しばつが悪そうに帽子を目深に被り直した。変わらないその仕草に女は懐かしそうに目を細め、そして男の手に触れる。「もう置いていかないでくださいね」 答える代わりにそっと手を握り返してくるその不器用さも懐かしい。女はふふっと声を漏らしながら、何十年か振りにその傍らに身を寄せた。/手を取り合って
7/14/2023, 2:05:18 PM