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春爛漫の桜の下を歩く美しい景色の中に紛れ込む自分という異物に耐え難い気持ちになる。ああ薬を飲み忘れたなと自分の思考に差し込む影に困惑を強く感じるあからさまに負の感情が湧き上がる。ふと降り積もる桜吹雪の中で輝くような光の乱反射に取り込まれるようにこちらに向かって歩いてくる影。カチャカチャとアスファルトを蹴って小さな獣が歩いてくる。かわいいもこもこはこちらのことなど気にもせずに脇を通り抜けていった。何だったんだろうあの生き物、すっかりと頭の中に入り込んだ影がどっかに行った。ある意味助けられたのかもと振り返ってどこにもいないその獣の姿を桜の中に探している。幻覚だろうという理性がささやく。

4/10/2024, 3:50:14 PM