「ひなまつり」
三月三日。
春の光が、部屋の隅にある埃を静かに照らしている。
今日はひなまつり。
大きなボウルに、彩り豊かなちらし寿司を作る。
酢飯の匂いがツンと鼻を抜けて、なんだか遠い記憶の扉を叩く。
特別な日の、あの落ち着かない、でも少しだけ誇らしい気持ち。
足元では、愛犬のクロが「自分も混ぜて」という顔をして見上げている。
黒い鼻をひくひくさせて、春の匂いを確認しているみたい。
幸せは、きっとこういう、なんてことない瞬間の積み重ねだ。
ひな人形は出さなかったけれど、
クロと、この鮮やかなお寿司があれば、
私の心には十分、静かな春の風が吹いている。
3/3/2026, 3:05:34 PM