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飼い犬のムギの散歩時間になったので、ぽつぽつと家がある田舎町を散歩しているとたまたま公園前を通れば、公園の中から犬の姿を見た男の子が走ってきた。


「え、」

「ねえ!この子名前なんて言うの?!すごい可愛いなあ」





おまえ、おまえは 「なんでおまえ、なんで」
「? どうしたの?」


駆けてきた少年は10年前、交通事故により命を落とした幼なじみの姿だった。他人の空似なんかじゃ済まないぐらい、消えた記憶から声すら思い出し、酷似しすぎている目の前の少年に嬉しさよりも恐怖を感じた。
少年は、特に何気もなく、純粋な瞳で笑みを浮かべている。

まだ蒸し暑い夏の夕方にも関わらず、全身から汗が止まらずリードを持つ手が震える。

足元に座り込んだムギが、動かないことを不思議に思ったのか僕の顔を澄んだ瞳で見ていた。

7/30/2024, 6:22:08 PM