"ずっと隣で"
敵側となり、俺から離れていったあの時。俺はあいつへの恋心に気付いた。
ダメだ。性別云々じゃなく、この恋は実っちゃいけない。だからこの想いを告げずに、ずっと片想いのままでいようと思ってた。
けど、ダメだった。あの日の事は今でもハッキリと覚えている。
病室で二人きりの時に告げられた。向こうから。
向こうも同じだった。けれど想いを告げる事だけはしようと、今以上のチャンスは無いと思い、告げに来たという。
ただ、黙る事しかできなかった。
口を開けば、どの言葉を出しても《好き》が滲み出てしまいそうで、黙る事しかできなかった。
そんな俺に気付いたのか、根気強く俺の言葉を引き出そうとした。
粘って交わし続けたが、健闘むなしく根負けした。
期限付きで《恋人》となって、目指すその日まで隣で見守ってほしい。
なんて強情なのだと。この男は頑固だと、ある程度理解していたはずなのに、想像を遥かに超えていた。
提案に反論する所も突く所も無い。反対する理由は自白で完全に潰えてる。
やっぱり、ダメだった。
それで今に至っている。
今でも気持ちは変わらない。あの時、強引にでも無言を貫いていたらと思う時がある。
けれど、後悔はしていない。
俺は心のどこかで、あいつの《恋人》になって隣を歩きたいと思っていたのかもしれない。
もしかしたら、そこまで見抜いていたのかもしれない。当時も本人にそこまでの目は無いはずだから、強情だっただけかもしれないが。
3/13/2024, 2:38:15 PM