お題 理想のあなた
少し気難しくて、煩わしい男が好きだ。
正確には、わたしにとってそういう人というだけで、会社や社会では気の毒になるほどの協調性を持っているし、謙虚なふりも上手にできる。
社交性があり、親切に見られるけど、頭の中ではいつも周りを斜めに見てるし、
非難するときには、皮肉なのかユーモアなのかギリギリの所を狙ってくるので
こちらも頭を使って、慎重に応戦しなければならない。
明日の夜、映画を見ようとデートに誘うのではなく
明日の朝、一緒に朝食を食べようと誘って欲しい。
自分で料理を作るくらいなら、外食のほうがマシだと言い放ったり、
たまに突然、思い出したように、いついつに食べたあの料理が美味しかったと言い出して、
内心呆れてるわたしに全く気づかずに
誇らしげに目を輝かせて、返ってくる言葉を期待して待っていて欲しい。
ときどき何気なく話す言葉を拾って、ずっと前に読んだ覚えのある小説の一節を言い始めたら、それはもう心が震えて、一生離れたくないと思うだろう。
わたしも複雑で、わりと面倒な人間だから、たまに酷く傷つけ合うかもしれないけど、
安心して一生愛されていて欲しい。
と、いうふうに理想のあなた、と妄想すると
どうしても昔の愛憎相半ばする男に寄った人物が浮かんできてしまう。
歳が離れていたので、中年から初老に入ろうとしている今の姿を見たら、夢から覚めたような気持ちになってしまわないか、
若い女でなくなったわたしのことを、今のあなたはどう感じるのか、
ときどき想像して、真剣に考え込む。
これはもう癖に近いので、諦めて欲しい。
5/21/2023, 3:05:58 AM