佐吉智明

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2.さよならは言わないで

涙をこらえて彼女の後ろ姿を見送った。
ここで泣いたら彼女の姿が見えなくなってしまう。
どうせもう二度と会えないのだ。
泣いてなんかいられない。
あの美しい姿をしっかりと目に焼き付けて―――。

初めて出会った日、君は僕に言った。
「怖がりさんなのね」
そうだよ。
僕は並の女の子よりも怖がりで泣き虫だ。
嘲笑って馬鹿にすればいい。
でも君は口元に上品な笑みを浮かべて僕に囁いた。
「大丈夫。私が守ってあげる」

からっぽになった隣の家を見てなんだかとても虚しくなった。
君が僕に言った最後の言葉。
「さよならは言わないで」
もう二度と会えなくなる気がするから。

君はいつまでも僕の一番の親友だ。



いま、彼女の声が聞こえた気がした。

12/3/2023, 10:18:42 AM