おぼろげ

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【この場所で】※長文注意
―喫茶店の薫り―
あそこは、6人……と1匹のいる喫茶店。
でも、喫茶店に行くには……徒歩3秒。いや、3秒もかからない。
喫茶店に行きたい、と願うだけ。願って、部屋のドアを開ける。
開けた先は喫茶店になっていた。
「かんなちゃん?どした?」
「別に。ここにくる理由なんてなくていいでしょ?」
20歳のムカつくけどイケメンの八木さんがエプロンを着てラテを作っている。
「八木さん仕事は?大学行ってないのは知ってるけど、仕事は行ってるっしょ?いつも喫茶店に居て大丈夫なん?」
「まあ、多分大丈夫でしょ」
呑気な人だ。ふと、周りを見渡すと珍しくお客さんがいた。なのであたしは声を小さくする。
「てか、榎本は?いつもあいつ、不登校で昼間は居るじゃない。」
「お客さんが来たから、2階の仮眠室で寝てる。」
「あぁ、いい判断」
 榎本は馬鹿みたいに五月蝿い。でも、やっぱりこの喫茶店にいる、ということは何か過去にあったのだろう。
あたし達は、過去に傷ついた。
だから、ここにいる。
でも、ここでのルールは、【卒業】するまで誰も過去のことは踏み出してはいけない。
あくまで、その人が話そうと思わなければ。
聞いてほしい、と言ったなら話は別だけどね。
「この場所で、いつか、あたしは、」
「?どうしたの?」
「……なんでもない。ココア淹れてくれる?」
【卒業】……23歳を過ぎるとここにはいれなくなる。
突然と喫茶店の扉がなくなるらしい。
八木さんも、後3年で……
あたしはココアに口をつける。
やっぱり甘くて、でもホッとする美味しさだった。

2/11/2026, 10:24:13 PM