小絲さなこ

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「夜に溶けていく文字」


この時間に調子が良いのは、夜中に生まれたからだと思ってる。

BGMは、外から聞こえてくる音。
遠くから聞こえる救急車のサイレン。
ちょっとヤンチャなバイクの音。
控えめな虫の鳴き声。
繋げたままのチャットルームは、私ひとり。

ふらりと入室して、たまに寝落ちするあの人は、今夜はたぶん来ない。昨日「明日は飲み会」と言ってたから。来てほしいけど。

カタカタとキーボードを鳴らす。

ああ、またタイマーをセットするのを忘れてしまった。
延々と作業し続けてしまうのは良くないからと、あの人が勧めてくれた、ポモドーロタイマー方式を取り入れようとしているのに。

データを保存し、画面はそのままにして、ベッドに寝転んだ。
無造作に置いている資料をパラパラとめくる。
まだ寝るつもりはない。


会いたくて、会えなくて、次の約束さえも不安定。
いや、不安定なのは自分の生活か。
あの人は、ちょっと夜更かしなだけのマトモな人だもの。


午前二時半。
あと一時間くらい頑張るか。

今度こそ、タイマーをセットして、キーボードに触れる。


この時間が、たぶん一番私らしくいられる。


────夜明け前

9/13/2024, 3:08:05 PM