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 「えー?!明日地球滅亡するんだって!」
 「何、そんな話題今更知ったの?」
 「え?知ってたの?なんで早く教えてくれなかったの
 よ!今日何にもやりたいことできてないよ。これが最
 後の1日だなんて…」

 彼女は地球が滅亡するなんていう噂を信じてしまっているらしい。流石に天然といえどそんなことまで信じることあるか?と思ったが、面白いので話に乗ってあげることにした。

 「まぁいいんじゃない。何にもしない1日が最後っての
 もさ。」
 「いやだよ〜、私死ぬまでにやりたいこといっぱいあ
 るのに、もう達成できないじゃん!」
 「まだ明日があるから明日やればいいよ。」
 「1日じゃ足りないよ…。過去に戻れたら、1日1日を全
 力で楽しんで過ごせるように生きるのにな。」
 「それじゃ生きててしんどいだろ。疲れきってしんじ 
 ゃうよ。」
 「後悔を残してしぬよりマシだよ!あ〜時間巻き戻ら
 ないかなぁ。」
 「後悔ね…。」
 「…でも今日は久しぶりに2人で居られたし、それだけ
 でも十分かな。これから2人でやりたいこともいっぱい
 あるけど、一緒の時間を過ごせるだけでもすごく幸せ 
 なの。」
 「・・・」
 「明日、最期の時まで一緒にいてね。」

 彼女の表情を見ると、本気のようでなんと返せば良いかわからず言葉が詰まった。本当に最期の時なら返す言葉はごまんとあるが、それを言うべきは今ではない。

 「…そんな心配しなくても大丈夫だよ、地球滅亡なん
 てしないから。」
 「えっそうなの?」
 「根拠のない噂だから、嘘みたいなもんだよ。」
 「なーんだ、良かった…。てか嘘ってわかってるなら
 早めに言ってよ!もー…」
 「ごめんごめん。でも一緒に過ごす時間が幸せだって
 言ってくれて嬉しかった。明日が最後の日じゃなくて
 も、ずっと一緒にいるよ。」
 「それは、本当?」
 「本当だよ。」

地球が滅亡しないなんてことない日に、返せる言葉はこれが精一杯だった。

7/25/2025, 3:12:23 AM