いちご

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星が溢れる


初めての街。初めての景色。初めての空気。初めての学校。
地元を離れて大学に通うことになった。

オシャレなカフェ。広いデパート。高いビル。様々な服装。
都会の表と裏。満員の電車。大きな交差点。
田舎育ちの私には、初めてに囲まれた生活だ。

星も見えない。
……地元で見た星空をいくら探しても、見つからない。
高いところから見下ろせばいくらでも見れるのに、見上げた途端になくなってしまうのだ。


それはそれは綺麗な空だった。黒い背景にびっしりと並ぶ白い斑点は、一時期流行ったスマホカメラのフィルターを思い出させる。

目の煌めきが止まらない生活もつまらなくはなかった。星のような夜景を眺めるのも、様々なものがあるのも、退屈はさせなかった。

─それでも私は、暗闇に溢れる星をもう一度みたい。様々な星を…


私の目から溢れたのは星なのだろうか。

3/15/2024, 10:17:23 AM