生きていれば誰かを好きになる事を、何回か経験するだろう。
馬齢を重ねてもう60年近い中で、
淡いかすかな思い出や、何年かお付き合いさせていただいたものまであるが、
その中には、やっぱり一生に一度だけするような、燃えさかる炎のような恋もあったのである。
いや、私は女性を引き寄せるような魅力にはまったく乏しいタイプだし、一般男性の平均的な恋愛経験数なんて統計は見た事もないのだから、普通人はどのくらい恋をするのか知らないのだが、それにしても自分の経験が豊富だったとは思えない。
だけれども、
古今東西、数々の大恋愛があったとしても、それらに少しも引けを取らないくらいの経験が、
1度だけある。こんなのは、1度で十分なんだ、その後の私は燃えかすみたいなものなんだから。
でも、恋多き男とか女とか言われている人の行跡を追ってみても、相手をコロコロ変えているように見えて、
それは単なるパトロンだったり、代用品と付き合っていただけで、彼らも本当に好きな相手は1人だけだったのではないだろうか?
私は西行のことを書いた事があるけれど、西行の秘めた恋心が、どんなにか辛く、身を焼く程の苦しみであり、刹那さであったかが想像出来る。
西行は、私である。
そう、私の恋は道ならぬ恋であった。
2/17/2024, 3:06:06 AM