「あ...」
私の目に可愛らしいフォルムをした人形が映る。
その瞬間、私の心に何か既視感のようなものが浮かぶ。懐かしいような、何か切ないような...
「おかあさん!あれ!あれ欲しい!」
「えー?」
お母さんは困ったように笑うが、私は諦めずにねだり続ける。
「おかーさんー!あれ欲しいー!!」
「また今度ね〜」
「やぁだぁー!!」
駄々をこねる私を見る目が増える。
お母さんは更に顔を曲げて私に言う。
「ごめんねぇ、今回はやめとこ?」
「えぇーやーだーよぉー」
「だーめ、我慢して」
お母さんは私を制止する。
黄色い鳥の人形を指さし、私はもっと声を上げる。
「おねがい!!買って!!」
普段私がここまで駄々をこねないのもあって、不思議そうな顔をしたお母さんは観念したように人形を手に取る。
「わかった、そこまで言うなら買うね」
「...!ありがとう!おかあさん!」
レジに通し私の手に渡ったその人形は、さっき見たよりもずっと輝いて見えた。
相変わらず、初めに感じた感情の正体は分からなかった。
#きっと忘れない 0820
8/20/2025, 1:51:23 PM