『目が覚めるまでに』2023.08.03
俺の妻はイケメンである。カッコイイ系女子ではなく、イケメンなのだ。
どこがイケメンかと言われると、全てとしか言いようがない。
それは彼女の経歴から来るもので、かの劇団で世の女性を魅了してきたのだ。
俺がプロポーズした時だってそうだった。
「普段は王子様なキミをお姫様にしたい」
一世一代のプロポーズの言葉。彼女に似合う言葉を三日三晩、悩んで告げたのだ。
すると彼女は照れるかなにかするかと思ったが、俺に左手を差し出しながら、
「もちろん、貴方は私の王子様でいてくれるんでしょ」
と一言。これではどちらが王子様か分からない。娘に対してですら、王子様オーラをバシバシ出しているのだ。
しかし、そんな彼女も可愛らしい面はある。寝顔だ。
寝顔が本当に可愛い。寝起きももっとかわいい。
朝に弱く、ぐずっているのを娘に起こされている様はたまらなくかわいい。
今も彼女は普段のイケメンぷりとはかけ離れた、言ってしまえばマヌケな顔で寝ている。起きる時間はとっくに過ぎた。
そろそろウチの小さな女の子が、ぷりぷりしながら起こしに来ることだろう。
なので、俺は彼女の目が覚めるまでに、これから始まる愉快な出来事を記録するべく、カメラアプリを起動した。
8/3/2023, 12:54:44 PM